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厚生労働省

「パワハラ基本情報」【第57回】 「上司から嫌がらせを受けたとして損害賠償請求したものの、認められなかった事案」 ―損保ジャパン調査サービス事件

  • 精神的な攻撃型

【第57回】
上司から嫌がらせを受けたとして損害賠償請求したものの、認められなかった事案

結論

不法行為を構成する事実は、被告において認められないとして、原告の請求が棄却された。

事案の概要

Xは、Y1社に雇用されていたところ、対人トラブルを多数起こしており、始末書も多数回提出している中で、被告の上司であるY2(但し直接の上司ではない)が直接注意するようになった。その後、Xは、①Y2から、「てめー、一体何様のつもりだ。責任を取れ。自分から辞めると言え」などとの退職強要や、「てめえの親父にも迷惑がかかるんだぞ、いいんだな」との脅迫的言辞を受けた上に、②Y2から、たびたび「俺が拾ってやったんだから感謝しろ」と威圧混じりに言われたほか、③嫌がらせないしパワハラにより別部署への異動を命じられ、それにより、XはPTSDに罹患して、休職を余儀なくされたと主張し、Y1及びY2に対して損害賠償等を求めた。

判決のポイント

(1)Xが主張するような退職強要や脅迫的言辞があったとは認められない。

(2)Xの採用面接からY2が関わったという縁もあってか、Xは直接会話したり、直接Y2にメールを送るなど、普通以上に親しくしていたことが認められる。Y2がXに対し、「俺が拾ってやったんだから感謝しろ」のような言辞を、仮にそれに近い内容で述べたとしても威圧混じりにとかXが精神的苦痛を感じるような態様で述べることは考え難い。

(3)Y2がY1内で送ったメールには、Xのことを「あの馬鹿は」「あんなチンピラ」といった表現になっており、この表現は穏当でないが、原告を特に陥れようとするような内容は含まれておらず、嫌がらせないしパワハラをうかがわせる事実は認められない。

(4)Xについての異動は、人事上の措置として、十分合理的な理由が認められ、そのほかこの異動が原告に対する不法行為等を構成するような事実は認められない。

コメント

部下が上司から嫌がらせ等を受けたとして損害賠償を求めたとしても、当然ながら、必ずしも認められるものではない。

本件でXとY2との日頃の関係性から、威圧混じりの態様で述べたとの認定がなされなかったことなどからしても、上司としては、部下との間で、日頃、円滑な人間関係を形成しておくことが重要であることに留意が必要と考えます。

 

著者プロフィール

荻谷 聡史(おぎや さとし)
安西法律事務所 弁護士
2008年 弁護士登録