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厚生労働省

パワハラ基本情報裁判例を見てみよう

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  • 同僚同士のパワハラの裁判例

【第51回】
同僚社員によるいじめや嫌がらせが、その陰湿さ及び執拗さの程度において、常軌を逸した悪質なひどいいじめ、嫌がらせであるとされた事案

結論

Xに対するDら同僚の女性社員のいじめや嫌がらせは、いわゆる職場内のトラブルという類型に属する事実ではあるが、その陰湿さ及び執拗さの程度において、常軌を逸した悪質なひどいいじめ、嫌がらせともいうべきものである。

事案の概要

F社に勤務していたX(女性)が、精神障害の発症がF社の同僚等の職務に伴ういじめとそれに対する適切な措置がF社においてとられなかったという業務に起因するものであるとして、京都下労働基準監督署長がした療養補償給付不支給処分の取消しを求めた事案。

判決のポイント

1.Xに対するいじめや嫌がらせの内容

本判決は以下のようないじめや嫌がらせが存在したと認定した。

Xは、平成12年6月頃から、Dを中心とする女性社員7名らよりXに聞こえるような態様で非難され、積極的に悪口をいわれる等、いじめを受け始めるようになった。

Xは、平成13年5、6月頃、N課長(男性社員)から跳び蹴りのまねや顔すれすれに殴るまねを複数回された。それらの行為が上司の部長の前でされることもあったが、部長がN課長に注意を与えることもなかった。

Xは、平成13年6月1日から3日まで京都国際会議場で開催された関西営業本部管理部主催の営業拡販会議に受付支援に赴いて受付業務を行ったところ、その際、Y支社からXと同じく受付支援に赴いていた社員3名、また、Z支社からも受付支援に赴いていた社員1名らから悪口を言われた。

Xは、平成14年6月頃、同僚の女性社員からパソコン操作について質問を受け、教えた際、同女からお礼としてケーキをもらったことがあった。その際、上記のことで女性社員4名から「あほちゃう」「あれ〔X〕ケーキ食べたから手伝ったんやで」等と執拗な陰口を受けた。

Xは、平成14年7月頃、Dを含む女性社員4名から勤務時間中にIPメッセンジャーを使用して毎日のように同期らにXに対する悪口を送信するという行為をされた。

Xは、平成14年10月、コピー作業をしていた際、女性社員2名から目の前で「私らと同じコピーの仕事をしていて、高い給料をもらっている。」等言われた。

平成14年11月上旬、Xに対するいじめの中心人物であったDの席が異動によりXの席の近くになった。その頃、Dを含む女性社員3名から「これから本格的にいじめてやる」旨言われたことがあった。

Xは、平成14年11月22日、京都のリーガロイヤルホテルで開催されたF社の得意先を対象にしたファミリー会の受付業務を担当していた際、女性社員1名がXの目の前で同会の支援業務に当たっていた大阪の社員に対し、「幸薄い顔して」「オオカミ少年とみんなが言っている」等と悪口を言われた。

2.同僚女性社員のいじめや嫌がらせによってXが受けた心理的負荷の程度

女性社員らによるXに対するいじめや嫌がらせは他の人が余り気づかないような陰湿な態様でなされていたこと、それをXが認識し、深刻に悩み、以前の上司であるUらに相談していたことが推認される。

Xに対するDら同僚の女性社員のいじめや嫌がらせであるが、個人が個別に行ったものではなく、集団でなされたものであって、しかも、かなりの長期間、継続してなされたものであり、その態様もはなはだ陰湿であった。Xに対するいじめや嫌がらせはいわゆる職場内のトラブルという類型に属する事実ではあるが、その陰湿さ及び執拗さの程度において、常軌を逸した悪質なひどいいじめ、嫌がらせともいうべきものであって、それによってXが受けた心理的負荷の程度は強度であるといわざるをえない。しかも、Xに対するいじめや嫌がらせについて、F社の上司らはXからの相談を受けた他は気づくことがなく、同気づいた部分についても何らかの対応を採ったわけでもなく、また、Xからその相談を受けた以降も何らかの防止策を採ったわけでもない。Xは、意を決して上司等と相談した後もF社による何らの対応ないしXに対する支援策が採られなかったため失望感を深めたことが窺われる。

3.精神障害発症の業務起因性の有無

平成14年11月頃Xに発症した「不安障害、抑うつ状態」は同僚の女性社員によるいじめやいやがらせとともにF社がそれらに対して何らの防止措置もとらなかったことから発症したもの(業務に内在する危険が顕在化したもの)として相当因果関係が認められる。

コメント

職場内でのいじめや嫌がらせを認識した場合には何らかの防止策を採る必要がある

本件は、労働基準監督署長の不支給処分の取消しを求める行政訴訟(取消訴訟)であり、民事損害賠償請求訴訟ではありませんが、会社が職場内でのいじめや嫌がらせを認識しながら何ら対応をしなかった場合、職場環境配慮義務違反に基づく損害賠償責任を問われうる可能性がありますので、そのような事象を認識した場合には、会社として認識した事象の内容に応じて必要な対応をすることが肝要であると考えます。

 

著者プロフィール

山岸 功宗(やまぎし よしひろ)
安西法律事務所 弁護士
2006年 弁護士登録